MediaTekスマートフォンとの選び方 2015年1月版

2012年7月に「Media Tekスマートフォンとのつきあい方」という記事を書いた。
それから2年が過ぎ、2015年ともなると、内容がいろいろ変わってきてる点がある。
それを含めて書き直してみた。


台湾のMediaTek (MTK)(台湾表記:聯發科技/中国表記:联发科技)社製のチップセットを使用した低価格スマートフォンは、日本では、2013年4月に発売されたMT6577搭載の「Covia FleaPhone CP-D02」を皮切りに、いろんな機種が発売されています。

2014年は私が把握している限りで11機種発売されています。
(2014/10/21:国内で正式発売されたMediaTekチップ採用のスマートフォン)

2015年も、早速何機種か登場しています。
ただ、初心者には違いとかがよく分からないと思います。

見分け方のポイントについてお伝えします。

必要な覚悟
MediaTek SoC搭載製品に限らない、低価格帯スマートフォンについての基本的な心構えとして・・・

「OSのメジャーバージョンアップは期待するな」
「1年で使い潰すものとして考えておく」

なので、1年ぐらいで買い替えるモノとして考えておくといいと思います。

各種スペックについて

スペックについて注意が必要な点を上げます。

・CPU(SoC)の選択について
正直なところ、いまであればぎりぎり最低ラインのMT6572(Cortex-A7 2コア)以上であればなんとかなります。
しかし、これからを考えるとMT6582(Coretex-A7 4コア)以上を搭載したものを選択するべきだと思います。
細かいSoCの種類については、下の方にある「SoC(CPU)について」を見てください。

・RAMとストレージ容量について
RAM512MBだけならまだなんとかなりますが、ストレージ4GBは駄目です。
あっという間にストレージが一杯になってしまうでしょう。

できれば、RAM 1GB/ストレージ 8GBとなっているものより上のものを選びましょう。

・液晶について
3インチ台は、画面タッチしての文字入力が結構つらいです。
中国では4.5インチより下の需要がかなり減っているようで、最近のメインは5.0インチ~6.0インチ、と大型化してきています。
特にLTE対応モデルは、5.0インチで小さい方というような状況です。
日本での販売もだんだんとそっちよりになるのではないかと予測されます。

・カメラ
基本的に、MediaTek SoC採用モデルだと、あんまり性能がよくない、ということが多いです。
特にカメラ性能について謳ってない場合はあまり期待しないでおきましょう。

・GPS
GPS系統はちょっと問題が発生しやすいポイントです。

例えばドコモスマートフォンでは、SPモード使用時はドコモが用意している位置情報補完システムSUPL(Secure User Plane Location)を使用して、精度の高い位置情報が取得できるようになっています。
しかし、MediaTek機種に限らず海外モデルでは、どういったものを使うかは、その端末の設定次第となり、千差万別です。
このため、「GPSの取得が遅い」と言われるような状態となります。

IIJmio meeting 5「トークセッション. MVNOとGPSについて (大内)

次に、最近はGPS以外の衛星、例えば、ロシアのGLONASSや、中国のBeido(北斗)、日本のQZSS(準天頂衛星システム/みちびき)に対応している機種があります。

最近のMediaTek SoC採用機種では、GPSとGLONASSの2つに対応しているものが多いです。
それ以外のBeido(北斗)、QZSS(みちびき)については、SoC自体は対応も可能であったりしますが、firmware側に機能が組み込まれていないことが多く、基本、対応していないと思った方がいいでしょう。

現在、どの位置情報衛星を使っているかを確認するには「AndroiTS GPS Test」を使用することをお薦めします。

Dual SIMに意味があるか?
SIMが2枚させる「Dual SIM」にどんな意味があるのか?
結論から言ってしまえば、現状では、ほとんど意味がありません。

まず、2015年1月現在販売されている端末で、さした2枚のSIMが同時に日本国内で利用可能となるものは存在していません。
(Android 2.2時代までさかのぼると1機種 Coolpad W770だけ存在しているが今は無い)

「日本国内」と限定しているのは、「WCDMA」と「GSM」の2つであれば同時に利用できるためです。
日本にはGSM回線がありませんので、日本では使用できない、ということになります。
日本で同時に利用可能となるためには「WCDMA」+「WCDMA」もしくは「LTE」+「WCDMA」、「LTE」+「LTE」に対応している必要があります。

では、「SIMが2枚させる」ことを謳っているものは、日本国内でどういうことに使えるか?
同時には使えないので、パケットを使う回線を切り替える、ぐらいしか用途がありません。
正直あまり意味がないです。

このため、「Dual SIM対応」というのは、利点と言いづらい状態なので、気にしない方がいいでしょう。

国内販売のMediaTek搭載機について
国内で販売されているMediaTek搭載機は、海外販売のものにはない特徴があります。

まず1つは、法的な問題のクリアです。
技適等証明を取得して、法的な問題をクリアしています。
場合によっては、ドコモの通信網との接続試験(相互接続試験/IOT)を行い検証も取得しているものもあります。

なお、先日、技適を取得してない端末でもアメリカFCCの認可があれば国内での利用が可能になる、というようなデマが流れましたが、これは、ちゃんと考えればあり得ないことになります。
なぜなら、アメリカFCCによる検査では、アメリカで使える周波数帯での検査しか行われないためです。
アメリカでは、国際的に使用されている「WCDMA 2100MHz帯」や「WiFi 2.4GHz 14ch」などが使用できません。
これらは日本ではメインで使用されているのに、検査されていないにも関わらず使える様にする、というのはおかしな話となります。
(ちなみに、アメリカなど他の国でも同様で、他国の認証例えば日本の技適は通っていても、自国のFCCの認証が通ってない機器を使うと、もちろん違法です。なので海外利用時の違法状態を無くすため、きちんとした端末メーカでは各国の認証を取得しています)

もう1つは、音声/SMS契約がないデータonly SIMで使える様にする設定、です。
MediaTek端末では各端末メーカでは、MediaTekから提供されているベースのAndroidを、それぞれで使用しているタッチパネルやボタンなどに応じてカスタマイズし、使用しています。
基本状態では、音声/SMS契約がないデータonly SIMを使用した場合、アンテナが立たず、データ通信が行えない状態となってしまいます。

2015年1月現在、日本で販売されている格安SIMは、音声/SMS契約がないSIMが多いので、これに対応していないのは致命的となります。
このため、日本国内で販売される格安スマートフォンでは、音声/SMS契約がなくてもきちんと通信できるようにカスタマイズしたAndroidを搭載しています。
また、このカスタマイズを行うついでに、各社のAPN登録を追加しています。

なお、データonly SIMが使用できない場合、ブローヴちゃんで紹介されている「Android + b-mobile データ専用 SIM で電界強度を表示する」のMotorolaとXperiaの対策、もしくは「Android + docomo MVNO データ通信専用 SIM のセルスタンバイ&アンテナピクト問題対策 Xposed モジュール」を行うと、データonly SIMでも使える様になる場合があります。




SoC(CPU)について
MediaTekのSoC(CPU)は、いろいろあります。
数字が大きければ性能がいいのかと言えば、そうでもないところがあります。

まず、スマートフォン向けは「MT65xx」「MT67xx」という型番で、タブレッド向けは「MT81xx」「MT83xx」「MT87xx」という型番になっています。

2015年1月現在、MediaTekのスマートフォン向けSoCで買っていいものは以下のもので、性能が低い方から順に並べるとこんな感じです。

MT6572/MT6572M
  廉価向け2コアのもの。
  Cortex-A7 2コア 1.3GHzが基本スペック。
  MT6572Mだとクロックが低く、大抵1.0GHzぐらい
  2015年にもなるとRAM 512MB/ストレージ4GB機種は「ゴミ」に近いので激安でなけりゃ買ってはいけない。
  中国では、2014年 MT6572が当てられていた価格帯は、現在、MT6582に移行しつつある。

MT6582/MT6582M
  廉価向け4コアのもの。
  1万円前後でQuadcore搭載のやつは大抵コレ
  Cortex-A7 4コア 1.3GHzが基本スペック。
  MT6582Mだとクロックが低く、大抵1.0GHzぐらい
  基本は3Gのみだが、周辺回路チップMT6290と組み合わせLTE対応の製品もある
  2015年1月時点では、廉価機種を買うならせめてコレを積んでいる機種を選ぶべきである。

MT6592/MT6592T
  8コアのもの。
  Cortex-A7 8コア 1.7GHzが基本スペック
  MT6592Tは高クロック版で、2.0GHz
  基本は3Gのみだが、周辺回路チップMT6290と組み合わせLTE対応の製品もある
  単純なCPU性能的には、MT6595やMT6732より上となる場合がある。

MT6595
  LTE対応のbig.LITTLEな8コアSoC
  Cortex-A17 4コア+Cortex-A7 4コア 2.5GHzで、合計8コアといっている。
  SoC内にLTE関連部分も取り込まれている。

MT6732
  64bit 4コアCPUで、LTE対応のSoC
  Cortex-A53 4コア 1.5GHz, GPU Mali-T760
  中国では2014年末から搭載製品が登場してきており、これまでMT6582搭載機が当てられていた価格帯で販売されている。

MT6752
  64bit 8コアCPUで、LTE対応のSoC
  Cortex-A53 8コア 1.7GHz, GPU Mali-T760

今後、製品が出てくるものとしては、以下のものがあります。
以下については登場予定順で並べています。

MT6735
  CDMA2000にも対応したMT6732
  ただ、対応したことでGPUのスペックが下がっている
  Cortex-A53 4コア 1.5GHz, GPU Mali-T720

・MT6753
 CDMA2000にも対応してたMT6752
 こちらもやはりGPUのスペックが下がっている
 Cortex-A53 8コア 1.5Hz, GPU Mali-T720

・MT6795
 64bit 8コア 2.2GHz、とまでしか公表されていないもの
 GPUはIMG G6200/700MHzとなっている。
 FDD-LTE/TDD-LTE/TD-SCDMA/WCDMA/GSM対応

・MT6580
 MT6582の後継SoC、3Gのみ対応
 Cortex-A7 4コア 1.3GHzという点は同じだが、よりコストダウンがはかられている

・MT6570
 MT6572の後継SoC、3Gのみ対応
 Cortex-A7 2コア 1.3GHzという点は同じだが、よりコストダウンがはかられている

・MT67??
 LTE カテゴリ6に対応した64bit 8コアSoCを 2015年Q4予定
 製造プロセスが20nmになることで、より省電力になることが見込まれる

なお、いまさら買ってはいけないものとしては、以下のSoCがあります。
MT6516(GSM only),MT6573(初のWCDMA対応),MT6575(1コア),MT6577(2コア),MT6517(MT6577のTD-SCDMA版),

(参考1:MediaTekのスマートフォン向け3G/4G対応SoC一覧(2014/10/24))
(参考2:MTK手机网の20nm/64位8核/CAT6 联发科Q4推重磅旗舰)

“MediaTekスマートフォンとの選び方 2015年1月版” への1件の返信

  1. わかりやすいまとめですね。
    追記することがあるとすれば

    ・現行機種
    MT6592M 6592の廉価版 CPU 1.4GHz 。
    同解像度機(Jiayu G4S vs Lenovo A916)でantutu 32429 vs 27308
    但し2Dの結果はほぼ同じで3Dの結果が8%しか変わらないことから
    GPUの性能に変わりはなさそうです。
    5GHzのWifi対応機を見たことが無いのでそのあたりも違いでしょうか。

    MT6582Mを謳ってる機種も手元にあるものは1.3GHz駆動のような気がします
    無印との差って他の部分(カメラの解像度とかGPUとかLCDの最大サイズとか)のように思われます。

    ・買ってはいけない機種
    MT6589・6589T MT6582と大差ないか劣る性能の前世代
    Lenovo 型番末尾TのようなTD-SCDMA専用機

    関係ないですがPiguはちゃんとしたGPSが載っていると公式FAQにありましたね。
    一安心です。

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