技適未取得機器を用いた実験等の特例制度で使えるものは何か確認してみた

技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」の「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度 関係法令」を見ると下記の記載がある。

法第四条の二第二項の規定により法第三章に定める技術基準に相当する技術基準として総務大臣が指定する技術基準は、次のいずれかに該当するものとする。
一 法第三章に定める技術基準
二 国際電気通信連合無線通信部門の勧告M.1450-5に定める技術基準及び米国電気電子学会が定める規格のうち、次のいずれかのもの
1 IEEE802.11b
2 IEEE802.11a
3 IEEE802.11g
4 IEEE802.11n
5 IEEE802.11ac
6 IEEE802.11ad
7 IEEE802.11ax(Draft 1.0からDraft 4.0まで)
三 Bluetooth SIGが定める規格のうち、Bluetooth Core Specification Version 2.1からVersion 5.1までのいずれかのもの
四 米国電気電子学会が定める規格のうち、IEEE802.15.4
五 一般社団法人電波産業会が定める規格のうち、ARIB STD-T107又はARIB STD-T108
六 LoRa Allianceが定める規格のうち、LoRaWAN AS923
七 Sigfox S.A.が定める規格のうち、Sigfox RC3
八 国際電気通信連合電気通信標準化部門の勧告G.9959に定める技術基準
九 米国電気電子学会が定める規格のうち、IEEE802.15.4g
十 XGPフォーラムが定める規格のうち、A-GN6.00
十一 欧州電気通信標準化機構が定める規格のうち、ETSI TS 103 357 Lfour family
十二 欧州電気通信標準化機構が定める規格のうち、ETSI EN 302 264又はETSI EN 303 360

これらの示す機器が具体的に何であるのかを確認した。

一 法第三章に定める技術基準

該当の記述は「電波法 第三章の二 特定無線設備の技術基準適合証明

「技術基準適合証明」と「特定無線設備の工事設計についての認証」の双方を指している
一般的には両者をあわせて「技適など」と表現される。

二 国際電気通信連合無線通信部門の勧告M.1450-5に定める技術基準及び米国電気電子学会が定める規格のうち、次のいずれかのもの

1 IEEE802.11b
2 IEEE802.11a
3 IEEE802.11g
4 IEEE802.11n
5 IEEE802.11ac
6 IEEE802.11ad
7 IEEE802.11ax(Draft 1.0からDraft 4.0まで)
まぁ、2.5GHzと5Ghzを使用するWiFiのことである。

三 Bluetooth SIGが定める規格のうち、Bluetooth Core Specification Version 2.1からVersion 5.1までのいずれかのもの

そのままBluetoothデバイスである。

四 米国電気電子学会が定める規格のうち、IEEE802.15.4

LR-WPAN(Low Rate Wireless Personal Area Network)である ZigBee,Wi-SUN,EchoNet Liteなどのスマートグリッド機器などが該当すると思うが、後述の802.15.4gとの違いがいまいち認識出来ていない。

920MHz帯を使用する機器を想定しているものと思われる。

五 一般社団法人電波産業会が定める規格のうち、ARIB STD-T107又はARIB STD-T108

ARIB STD-T107は「特定小電力無線局920MHz帯移動体識別用無線設備」でスマートタグ

ARIB STD-T108は「920MHz帯テレメータ用、テレコントロール用およびデータ伝送用無線設備」で、Z-Waveなど。また、後述するG.9959相当

六 LoRa Allianceが定める規格のうち、LoRaWAN AS923

「LoRaWAN V1.0.2 forAS923MHz ISM Band(AS923)」というのは

ヨーロッパ向け認証プログラムをベースとし、日本を含むアジア 10 カ国向けに周波数帯(923MHz)などを変更した認証プログラム。対象国は、日本、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、ニュージーランド、シンガポール、台湾、タイ、ベトナムの 10 の国や地域

https://www.toyo.co.jp/files/user/corporate/doc/release/170905_TOYO_LoRaWANAS923_65135.pdf

LoRaWAN® Regional Parameters」によるとChannel Planは10種類あるようだ。

七 Sigfox S.A.が定める規格のうち、Sigfox RC3

Sigfoxの「Geographical zones」の「RC3」は日本向け設定という意味で、923.200MHzを使用する。

なお、RC1~RC7まであるが全部使用する周波数が異なるので地域違いは使うことができない。

八 国際電気通信連合電気通信標準化部門の勧告G.9959に定める技術基準

G.9959 : Short range narrow-band digital radiocommunication transceivers – PHY, MAC, SAR and LLC layer specifications」でARIB STB-T108 相当(Z-waveなど)

九 米国電気電子学会が定める規格のうち、IEEE802.15.4g

すでに登場しているIEEE802.15.4の詳細規格で、スマートメーター用の規格・・・という認識でいいのだろうか?

十 XGPフォーラムが定める規格のうち、A-GN6.00

sXGP (shared XGP) Specifications Version 1」で1.9GHzを使用する新自営システム

周波数帯域を1.9GHz帯としたTD-LTE方式の小電力携帯電話システムで、構内PHSの代わりに使用されることになるが、スマホが流用できるので期待されているもの。

十一 欧州電気通信標準化機構が定める規格のうち、ETSI TS 103 357 Lfour family

Short Range Devices;Low Throughput Networks (LTN);Protocols for radio interface A

一見、EU圏発祥の規格っぽいが、「SONY ELTRES」で920MHz帯を使用する。

十二 欧州電気通信標準化機構が定める規格のうち、ETSI EN 302 264又はETSI EN 303 360

ETSI EN 302 264は「Short Range Devices;Transport and Traffic Telematics (TTT); Short Range Radar equipment operating in the 77 GHz to 81 GHz band; Harmonised Standard covering the essential requirements of article 3.2 of Directive 2014/53/EU

77GHz~81GHz帯を使用する機器。79GHz帯高分解能レーダシステムで、ARIB STD-T111「79GHz帯高分解能レーダー」

ETSI EN 303 360「Short Range Devices; Transport and Traffic Telematics (TTT); Radar equipment operating in the 76 GHz to 77 GHz range; Harmonised Standard covering the essential requirements of article 3.2 of Directive 2014/53/EU; Obstacle Detection Radars for Use on Manned Rotorcraft

76GHz~77GHz帯を使用する機器。76GHz帯ミリ波レーダシステムで ARIB STD-T48「特定省電力無線局ミリ波レーダー用無線設備」

どちらも車載レーダーとして使用されるため、自動運転用のシステム関連と想定される。(下記は「電波防護に関する国外の基準・規制動向調査」からの引用」

固定電話をVoIPで転送できる電話機 パナソニック VE-GDW54登場

2022/09/05追記

パナソニックのVoIP対応コードレス、このVE-GDW54 / VE-GDW03と、FAX連動ができる KX-PD101/KX-PD102/KX-PD915/PZ910の世代の1回だけで終わっちゃいましたね


固定電話宛にかかってきた通話を、VoIPで転送して、スマートフォンで受け取りたい、という需要に対して、ついにメーカが応えてしまいました。

パナソニックから、VE-GDW54という電話が登場です。
jn150121-1-1

プレスリリース「自宅の着信を外出先のスマートフォンや携帯電話に転送できる デジタルコードレス電話機 VE-GDW54シリーズを発売
製品ページ「VE-GDW54

発売される製品は3種類
・親機のみ(コードレス受話器機能付き) VE-GDW54D
・親機(コードレス受話器機能付き)+子機1台 VE-GDW54DL
・親機(コードレス受話器機能付き)+子機2台 VE-GDW54DW

機能は2つ。
・外出中にかかってきた固定電話をFUSION IP-Phone SMARTを使って転送する
  ユーザがFUSION IP-Phone SMARTの契約を行う必要がある。
  転送先の電話番号については制限はない。
  FUSION IP-Phone SMARTの無料通話先(無料先一覧)であれば、通話料無料で転送できる
  無料通話先以外はFUSION IP-Phone SMARTの通話料金が追加でかかる。

・家庭内のWiFi環境にスマートフォンがある場合に子機になる
  VE-GDW54をWiFi接続する必要あり。
  スマートフォンを4台まで登録可能。スマートフォンには専用アプリ「スマートフォンコネクト」をインストールする必要あり

重要なできないこと
・固定電話にかかってきた電話番号は転送先には通知されない
・外出先から、固定電話の番号で電話をかけることはできない
・VE-GDW54に割り当てたFUSION IP-Phone SMARTの番号にかけても鳴らない(たぶん)

FUSION IP-Phone SMARTの番号にかけても鳴るんだったら、より面白かったんですが、その点はちょっと残念ですね。
あと、FUSION IP-Phone SMART番号に転送する時は、何らかの手段でかかってきた番号も分かる、とかあったら、良かったんですけどね

DECTについてまとめた 2013/09/27版

最近、「1.9GHzを使うDECT形式だから、無線LANや電子レンジと競合しない!」というのを売りにしたコードレス電話が、お店で販売しているものの主流になりつつある。

このDECTについて、このblogではこれまで、下記の様な感じで紹介をしている。
DECT仕様のコードレス電話(2011/08/29)
DECTの違いに注意のこと(DECTは国によって周波数が違うよ(2013/07/31)
ここらで書いた記述を元にいろいろ付け加えてみた。


まず、DECTについてざっくりと説明すると海外で使用されているコードレス電話で、ヨーロッパの規格ETSI(日本で言うJISとかそんな感じ)が1988年から制定を開始し、1991年に初版が発行されたコードレス電話の規格「Digital Enhanced Cordless Telecommunications(DECT)」となります。

この規格の上では、使用できる周波数帯域は「1880MHz to 1980 MHz」「2010 MHz to 2025 MHz」というぐらいの大まかか感じでしか制定していません。

実際に使用する周波数帯域の詳細については、各国の事情に合わせて行うことになっており、下記の様にそれぞれの国にて制定されています。

・ヨーロッパ 1880 MHz~1900 MHz
・アメリカ/カナダ 1920 MHz~1930 MHz
・南アメリカ 1910 MHz~1930 MHz
・中国 1900 MHz~1920 MHz
・日本 1893 MHz~1906 MHz

つまりは、「ヨーロッパで買ったDECT機器」と「アメリカで買ったDECT機器」と「日本で買ったDECT機器」というのは、それぞれ違う周波数帯を使っているため、DECTといっても相互間で使える、というわけではありません。

そのため、厳密には・・・

・ヨーロッパETSIによる「DECT」(1991年規格制定,1993年頃より製品リリース)
・アメリカFCCによる「UPCS(Unlicensed Personal Communication Service)準拠のDECT」(2004年制定,2006年発売)
・日本の「J-DECT」(2010年発売)

というような感じで分かれていたりしますが、シェアが見込まれるためヨーロッパとアメリカの両対応になっているDECT機器が多く見受けられます。
見分け方はスペック表で、対応周波数帯に「1880 MHz~1900 MHz, 1920 MHz~1930 MHz」と、両方の周波数帯が書いてあれば、両対応となります。

海外製品で日本に対応している、という製品は、現状ありません。
「周波数帯が違う」という問題以外にもいろいろな問題があるので、対応されることも、あまり期待できないでしょう。

・回線の細かいパラメータが国によって違う(SLIC Setting)
 基本的には日本は安定しているので、大抵は問題ないものの・・・

・発信者番号表示の方式が違う(Caller ID Scheme)
 このCaller ID Schemeは、国や電話会社によって違う

・漢字とかを表示する能力が無い

まぁ、ここらへんのことは、海外のVoIP機器を使おうとすると、良くでてきたりする項目になります。

今後、日本で発売されるコードレス電話はJ-DECTのみ、となっていくでしょう。
DECTではデータ通信ついても定義されています。

製品例としては、すでにパナソニックから、ドアモニターでの動画データの送信、とか、ホームスマートフォンとかがあります。

どんどん、いろんな商品が出てくるでしょうね。

参考文献
デジタルコードレス電話の新方式導入のための技術的条件の策定について
情報通信審議会 情報通信技術分科会 小電力無線システム委員会 報告(案)

Super PHSって製品リリースされたの?

J-DECTと共に1.9GHz帯を使用する次世代コードレス電話ということで検討されていたはずのSuperPHS(sPHS)。
これを採用した製品ってリリースされてるんでしょうか???

日本でしか使えないので、制定はしたものの、使われてない、という気がしてなりませんがね・・・

参考文献
デジタルコードレス電話の新方式導入のための技術的条件の策定について
情報通信審議会 情報通信技術分科会 小電力無線システム委員会 報告(案)

デジタルコードレス電話の新方式導入のための技術的条件の策定について」より「新しいデジタルコードレス電話システムの技術的条件の概要」

(1)DECT準拠方式 (2)sPHS方式 (参考)現行方式
周波数帯 1,893.5MHz~1,906.1MHz 1,893.5MHz~1,906.1MHz 1,893.5MHz~1,906.1MHz
キャリア周波数間隔 1.728MHz 2.4MHz 300kHz
多重方式等 TDMA‐TDD TDMA‐TDD TDMA-TDD
多重数 6,7,8,9,10,11又は12 8 4
変調方式 GFSK, π/2‐DBPSK, π/4‐DQPSK, π/8‐D8PSK, 16QAM, 64QAM ・OFDMA/TDMA場合
 BPSK, QPSK, 8PSK, 16QAM, 64QAM, 256QAM
・SC‐FDMA/TDMAの場合
 π/2‐BPSK, π/4‐QPSK, 8PSK, 16QAM, 64QAM, 256QAM
π/4シフトQPSK, BPSK(注1), QPSK, 8PSK(注2), 12QAM, 16QAM, 24QAM, 32QAM, 64QAM, 256QAM
(注1)π/2 シフトBPSKを含む。
(注2)D8PSKを含む。
伝送速度 1.1Mbps(GFSK時) 1.6Mbps(BPSK時) 384kbps(π/4-QPSK時)
占有周波数帯幅 1.728MHz 2.4MHz 288kHz
空中線電力 平均10mW/CH以下
空中線利得 4dBi以下
スプリアス領域における不要発射の強度 ‐36dBm/MHz以下 2.5μW以下
混信防止機能 キャリアセンス

DECTの違いに注意のこと(DECTは国によって周波数が違うよ

イギリスのパナソニックからKX-PRX120というAndroidスマートフォンと同等形状をしたDECT対応の電話が出るようで話題になっています。

プレスリリース「New Touch Panel Cordless Phones – Exclusive in Design, Smart in Function

親機込みで169ユーロということなので、そこまで出す価値があるのかなぁ?と悩ましいところです。

で・・・こういう海外でDECT対応機器の新製品があると、アクセス頻度が上がるのが2年前に書いた「DECT仕様のコードレス電話」という記事。

2011年ぐらいから日本でもDECT対応製品は発売されはじめ、2012年後半ぐらいからは「2.4GHz帯は電子レンジや各種WiFiで混雑してる。1.9GHz帯を使うDECTなら混雑無し」的な感じで、日本で発売新製品はみんなDECT対応機器という状態になっています。

そうすると、まぁ、海外のDECT機器は日本で使えるのか?と期待をするわけですよね。

そういうときに良く勘違いされるのが「日本には技適の問題があるから使えない」という話です。
これ、ハズレでもないんですが、正解でもないです。

DECTというコードレス電話の規格は、地域によって使用できる周波数帯が違います。
具体的には以下の通り。
・ヨーロッパ 1880 MHz–1900 MHz
・アメリカ/カナダ 1920 MHz–1930 MHz
・南アメリカ 1910 MHz-1930 MHz
・中国 1900 MHz-1920 MHz
・日本 1893 MHz–1906 MHz

海外のDECT機器が使っている周波数帯は、日本においては別の用途で使われています。
別の用途で使われている帯域を無許可/無免許で使っていると、妨害および無免許ということで取り締まられる対象となります。

スマートフォンとかでよく言われている技適問題より、事態が大きいのです。
また、日本の親機に海外の子機がつながるか、というのも、周波数帯域の問題があるので、非常に怪しいところです。


DECT仕様はヨーロッパの規格ETSI「Digital Enhanced Cordless Telecommunications(DECT)」が元となります。

使用する周波数帯に関することは、「EN 300 175-2:Digital Enhanced Cordless Telecommunications (DECT); Common Interface (CI); Part 2: Physical Layer (PHL)
EN300 175-2の最新はV2.4.1 (2012-04)のようです。
ただ、規格上は「1880MHz to 1980 MHz」「2010 MHz to 2025 MHz」の範囲内で使用可能なチャンネルの定義をしているだけで、実際にどこを使っていいのか、という点に関しては、各国の事情による、としている。