ミュンヘン市のLinuxディストリビューションLiMuxは死んでる?

「無料のLibreOfficeをやめて有料のWindowsとOfficeに戻すべき」という市議会の議論について開発元が反論」(2017/02/15)という記事が公開されている。

これは、ドイツのミュンヘン市が、古いWindowsとMicrosoft Officeの変わりに、LinuxとOpenOfficeを採用した、という話のその後のことである。

英語のWikipedia「LiMux」と、ドイツ語のWikipedia「LiMux
そして、標準のOpenOffice/LibreOfficeには無く、ミュンヘン市で必要な機能を追加するための拡張モジュール「WollMux」というのが、現状確認できる文献であるようだ。

初期はDebianベースで開発され、安定して配布するために、専用ディストリビューションLiMuxという形態を取るようになったようだ。

2010年12月のLiMux 3ではUbuntu 8.10をベースに、カスタマイズされたOpenOffice
2011年08月のLiMux 4ではUbuntu 10.04 LTSベースで、OpenOffice + WollMux拡張モジュール
2012年08月のLiMux 4.1ではUbuntu 10.04 LTSベース、OpenOffice + WollMux拡張モジュール
2014年11月のLiMux 5ではUbuntu 12.04 LTSベース、LibreOffice + WollMux拡張モジュール

LinuxディストリビューションとしてのLiMuxは、これ以降の情報はなく、公式サイトも現存していないようだ。
LiMux 5で使用しているUbuntu 12.04LTSのサポート期限は、2017年4月となっているため、これ以降の更新がなければ、死亡、という感じである。

ということで、少なくとも、ミュンヘン市の事例については、Linuxディストリビューションを作成してのLinuxデスクトップの運用計画、という面では、失敗しているのは間違い無いようだ。

一般的なUbuntuデスクトップベースでの運用に切り替わっているのか、それともWindowsベースの運用なのか、はたまた、サポート切れのLiMux(Ubuntu)デスクトップを無理矢理使っていくのかは、はっきりと見えていない。


2019/11/21追記

久しぶりに状況を確認してみると「WollMux」のサイト構成が変わっていた。

ソースコードは https://github.com/WollMux/WollMux で公開されていて、最新バージョンで18.0.11で、開発中バージョンとして18.1.6が出ている。

が・・・ダウンロード先として提示されているアドレス、例えば「http://webdav.muenchen.de/limux/sonstiges/wollmux/packages/WollMux-18.0.11」はホスト名解決が行えずアクセスできない。

githubの方は頻繁に更新されており、11/20付けで18.1.7 prereleaseが出ていたりするので、サイトの管理体制に難があるようだ。


2021/11/24追記

現在はサイトの方はWollMux 18.1.14と書いてあるが githubの方では2021/10/14付けでWollMux 18.2.7 をリリースしている状態だった。

2024/04/05追記

ドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州で州政府のパソコンを移行する、という話があるようで「ドイツ政府が3万台のPCでLinuxに乗り換えてMicrosoft OfficeからオープンソースのLibreOfficeに移行する」(2024/04/05)の記事の中でミュンヘン市の件についても触れられている。

なお、バイエルン州のミュンヘン市議会は先行して2004年にオープンソースソリューションへの切り替えを行っており、2013年にWindowsからLinuxへ完全に移行することに成功しましたが、職員へのトレーニング不足からか、一部の職員から不満の声が上がり、2017年にWindowsへ戻ってしまったとのことです。この背景には、Microsoftによるマーケティング戦略があったことも指摘されています。

ただ、額面上以上のことは確認してないようで、なんで2017年にWindowsに戻ったのかとか触れていない(LiMux 5のサポートが2017年4月で終わったけど、ほかのUbuntu系にしようとはしなかったから)

WollMux拡張がどうなったのかを確認してみると2023年7月リリースのver19.0からLibraOfficeの直轄プロジェクトとなって LibreOffice Template System としてリリースされていた。

ライセンスは European Union Public Licence (EUPL) というものを使っているようだ。


Wikipediaの記事を見ていると、このミュンヘン市の事例に触発されたように、自治体が主体となって作成したLinuxディストリビューションがいくつかあるようだ。

Canaima

公式サイト:CANIMA GNU/LINUX
ベネズエラ政府系で作成しているディストリビューションで、2007年から2017年の現在も継続して提供されているもの
最新版はCANIMA 5.0でDebianベースで開発されている。

2019/11/21時点ではサイトにアクセスできない。wikipediaの記載によれば2018年3月にversion 6.0がリリースされていた模様。

GendBuntu

フランスの国家憲兵隊で作成しているディストリビューション。
Ubuntuベースで開発されていたが、2014年6月のUbuntu 12.04LTSベースのもののリリース後、死んでいるようだ

Zorin OS

公式サイト:Zorin OS
イタリア ヴィチェンツァ市で採用されているLinuxディストリビューション。市が作ってるわけではない)
Ubuntuベースで開発され、最新のZorin12はUbuntu 16.04LTSベースであるようだ。

2019/11/21現在では2019年3月リリースのZorin OS 15と、2019年11月リリースの軽量化版Zorin OS 15 Liteの2種類が出ている。

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