台湾のMediaTek (MTK)(台湾表記:聯發科技/中国表記:联发科技)社製のチップセットを使用した低価格スマートフォンが中国圏を中心に増えています。
しかし、検索での来訪をみると、「MT6575」より「MT6573」の方が多かったりするので、スペックの違いがよく分かっていないのかな?と感じるところがあります。
そこで、MediaTekチップまわりのことを、ざらざらっと書いてみます。
MediaTekチップは、Huawei(華為技術)、Lenovo(联想集团)、Foxconn(富士康)といったあたりの低価格帯、特に、「Dual SIM」と呼ばれる携帯電話の契約を管理するSIMチップを同時に2枚使える機能を持つスマートフォンで使用されています。
また、山寨機と呼ばれる怪しげなメーカが製造しているスマートフォンや携帯電話は、大抵、このMTKチップを使用しています。
MediaTekはスマートフォンや携帯電話を少ない部品数で製造できるようにしている、というのに加えて、実際に動かすのに必要なソフトウェア/OSも併せて提供しているため、怪しげなメーカであっても比較的容易に製造できています。
(参考資料:中華Androidスマートフォンの組み立て風景)
Media Tekチップ搭載のスマートフォンとのつきあい方
製造側としてみると、いいところがあるMedia Tekチップですが、端末を使う側としては、いくつか問題があります。
・製造メーカをどれだけ信用するか?
MediaTekはサポートしない、製造メーカでの対応となるが
致命的な不具合がでたとしても、逃げるところもあるので注意
・OSのアップデートは期待できない
基本的にOSのアップデートは期待しない方が良い。
Lenovo/Huaweiは、そこそこ提供しているようですが、山寨機モノは特に・・・
ある程度ユーザ数が多いモノは、どういう経路か分かりませんがアップデートがあることも
・いろんなメーカから同じモノが出る
いろんなメーカから同じ外見でも違う名称のモノが出る
山寨機モノは、どこがオリジナルでどこがぱくりなのかを突き止めるのが困難。
製造を委託した工場が出荷チェックではねられたものを売る場合もあったりする。
・謳ってるスペックと実際が違う(CPU クロック編)
CPUクロックが違うことが多い。
中華系CPUクロック表記では良く、そのチップが内蔵しているGPUのクロック分を
加算してCPUのクロックだと表記することがある。
「CPU 1.0GHz+GPU 500MHz」→「CPU 1.5GHz」とか
「CPU 800MHz coreが2つ」→「CPU 1.6GHz」とか
これは、そういうものなので要注意。
実機で測定してみる、とか、CPUメーカのスペックシートを確認する、とかして
自衛する以外に防ぐ手立てがない。
・謳ってるスペックと実際が違う(中身違い編)
外見は同じでも、なかで使用している基板が異なる、なんてことがある。
見分ける方法は正直ない。
iPhone 4Sもどきは特に油断ができない。
・SIM 2枚差しは日本国内では意味が無い
スペックで「WCDMA/GSM dual SIM」とあるが、日本では意味が無い。
「WCDMA 回線+GSM 回線」か「GSM 回線+GSM 回線」の組み合わせで使用できる。
「WCDMA 回線+WCDMA 回線」という3Gの2回線同時待受ができる機種はMTKチップ系では2012/07現在存在しない。
(なお、Qualcommチップでなら1例だけCoolpad W770がある。)
・ドコモMNVO系のうちデータ通信のみのSIMでは通信できない場合がほとんど
MediaTekから提供されるAndroidが、SMS機能が有効になっているSIMでないと、3Gデータ通信が
行えない、という仕様となっています。
このため標準状態では、IIJmioなどのデータ通信のみのSIMでは3G通信が行えません。
Androidのframework.jarを書き換えて誤認させる対策を行うことでなんとかなります。
ブローヴちゃん「Android + b-mobile データ専用 SIM で電界強度を表示する」の対策のうち、MotorolaとXperiaの対策含めて実施するとなんとかなります。
MediaTekチップの種類
MediaTekは、いろいろなチップを作っています。
ここで紹介するのはCPU/GPUが一体型となっている携帯電話/スマートフォン向けに製造されているチップです。
・MT6516
ARM9 460MHz, GSM, Android 2.2
2012年7月現在、これを積んで売ってるやつはほとんどないが、
DVB-Tデコーダを積んでいるのでデジタル放送を受信できる携帯で見ることがある。
GSMのみ対応のため日本国内では携帯電話としては使えない
・MT6513
ARMv11 650MHz, GSM, Android 2.2/2.3
MT6516より上位, これのWCDMA対応版が下のMT6573になる。
2012年7月現在、これを積んで売ってるやつはほとんどない。
GSMのみ対応のため日本国内では携帯電話としては使えない
・MT6573
ARM11 650MHz, WCDMA/GSM dual SIM, Android 2.2/2.3
2012年7月現在、これを使ってる新製品が発売されているので注意が必要。
また、Android 2.3までの対応、という話だったはずなんだけど、
Android 4.0/ICSを搭載している、と称する製品が散見される。
Qualcommチップの600MHzと比べると遅い、と言われる。
日本語環境で使うには荷が若干重い。
・MT6575
ARM Coretex-A9 1GHz, WCDMA/GSM dual SIM, Android 2.3/4.0
GPU PowerVR SGX Series 5
2011年登場で、2012年7月現在の主力チップ。
これを採用している機種はWVGA以上の画面を持つモノが多い。
製品紹介→MTK MT6575チップのAndroid携帯のQHD / WVGA機種
・MT6577
ARM Coretex-A9 1GHz dual core, WCDMA/GSM dual SIM, Android 2.3/4.0
GPU PowerVR SGX Series 5
元々はMT6575Tという名称だったことから分かるように、基本的にはMT6575のデュアルコアモデル。
QualcommのSnapdragon S4の廉価モデル S4 Play/MSM8225対抗チップ。
MSM8225製品の例→Snapdragon S4/MSM8225搭載の中華スマートフォン Chili
2012年Q3にMT6577チップ搭載の製品が出てくる予定。
ちなみに、MTKの旧来型携帯電話向けチップのMT6236は、GSM専用のみながら、SIM 4枚差し、なんて機能までサポートしていたりします。
この記事は以前作成した「MediaTek チップについてのメモ書き」の更新版みたいなものです。