Active Directoryサーバのセキュリティ強化アップデート(CVE-2022-38023)に伴うONTAPファイルサーバへの影響についてのメモ


WindowsのActive Directoryサーバに対してセキュリティ攻撃ができることが判明したため、Active Directoryサーバに対してセキュリティ強化がWindows Update経由で2022年11月に配布されている。

このときのアップデートで対応されたのは下記の3点

KB5021131: CVE-2022-37966 に関連する Kerberos プロトコルの変更を管理する方法
KB5020805: CVE-2022-37967 に関連する Kerberos プロトコルの変更を管理する方法
KB5021130: CVE-2022-38023 に関連する Netlogon プロトコルの変更を管理する方法

CVE-2022-37966とCVE-2022-38023はどちらも暗号化方式として脆弱なRC4-HMACを使用するのをやめてAESに変更する、というものとなっている。

このため、Kerberos/NTLMv2のどちらを使っていてもRC4-HMACを使用している場合は、このWindows Update適用後に問題が発生する、ということになる。

Windows サーバで構成されているActive Directoryサーバ側での対応については以下にまとめられている

CVE-2022-37966 への対応とその影響について
CVE-2022-37967 への対応とその影響について
CVE-2022-38023 への対応とその影響について

いろいろ書いてあるが、Windowsサーバのレジストリ設定をすることで、強制適用を延期できるけど、最終的にはアクセスできなくなるよ、ということになっている。

で・・・どういう場合に問題が発生するのか?というところが問題となる。

問題が発生するもの

・Active Directoryサーバに対してRC4-HMAC暗号化を使ってKerberos認証を行う場合
・Active Directoryサーバに対してRPC署名を使ってNTLMv2認証を行う場合
・Active Directoryサーバに対してRPCシールとRC4-HMAC暗号化を使ってNTLMv2認証を行う場合

2023/07/24追記: sambaによるActive Direcotryサーバで NTLMv2認証を使う場合(詳細は一番下で解説)

問題が起こらないもの

・Active Directoryサーバに対してAES暗号化を使ってKerberos認証を行う場合
・Active Directoryサーバに対してRPCシールとAES暗号化を使ってNTLMv2認証を行う場合
 (NTLM/Netlogon Secure Channel は同じ意味)

(他にも大丈夫な場合はあると思います)

具体的な環境

2023年5月時点で適切にWindows Updateが実施されているWindows 7 / Windows Server 2012以降のマシンで、Active Directoryに参加している場合はKerberos/AESなので問題ない

Windowsであってもworkgroupとして認証を行う場合はNTLMv2となる場合があるので注意が必要

Linuxからcifs-utilsを使ってCIFS領域をマウントする場合、標準設定ではNTLMv2を使用するため注意が必要

LinuxをActive Directoryに参加させる場合、注意が必要
 Microsoft の 2022 年 11 月の更新により Active Directory の統合が中断される
 Red Hat Enterprise Linux and Microsoft security update of November 2022

ファイルサーバでの問題発生例

Active Directoryに参加しているファイルサーバでは以下のような形で認証が行われる模様

・[クライアント]→Kerberos認証→[ファイルサーバ]→Kerberos認証→[Active Directory]
・[クライアント]→NTLMv2認証→[ファイルサーバ]→NTLMv2認証→[Active Directory]

クライアントからどちらの形式でアクセスをしてくるかで、ファイルサーバ側からActive Directoryへの問いあわせ手法も変わる、ということになる。

このため、ファイルサーバの仕様で問題が発生することとなるため各社がお知らせを出している

・sambaでの問題 RC4/HMAC-MD5 NetLogon Secure Channel is weak and should be avoided Samba 4.15.13/4.16.8/4.17.4以降で対応
・NetAppでの問題 SU530: [Impact Critical] NTLM authentication fails due to enforcement of Netlogon RPC sealing (Microsoft CVE-2022-38023) ONTAP 9.7以降の2023年4月中旬以降提供バージョンで対応
・RedHat/samba CVE-2022-38023
・DELL PowerScale/iSilon PowerScale: Isilon: Netlogon RPC Elevation of Privilege Vulnerability (CVE-2022-38023) OneFS 9.5.0以降で対応
・DELL Unity Dell Unity: Is Unity affected by CVE-2022-38023? (User Correctable) Unity OE 5.1.0以降で対応

・Synology Synology-SA-22:24 Samba AD DC 2023/05/11時点では未提供だが対象リストを見ると通常のファイルサーバ用途では対応不要?
 QNAP,バッファローなども特にお知らせは無し

2023/07/24追記

・バッファロー TeraStation/LinkStation CVE-2022-38023の脆弱性対応によるTeraStation/LinkStationへの影響について
WindowsOSじゃないLinuxベースのやつは影響を受けるようです

・QNAP QTSシリーズ Vulnerabilities in Samba CVE-2022-37966 | CVE-2022-37967 | CVE-2022-38023 | CVE-2022-45141
FreeBSDベースのQESシリーズは影響なし、ですが、それ以外の通常QNAPは影響あり、と

NetApp ONTAPでの対応

対応が必要であるかの調査

NetApp ONTAPでは、ファイルサーバ=>Active Directoryの通信をRC4-HMACで行ってたということで修正がONTAP OSの修正がリリースされています。

2023年4月後半以降にリリースされたONTAP 9.7以降のパッチリリースのみが今回の問題に対応しています。

詳細については富士通が見える状態でリリースを置いてくれています

ETERNUS AX/HXシリーズ, ETERNUS NR1000シリーズにおける WindowsのNetlogon脆弱性対応(CVE-2022-38023)による影響(CIFS接続不可)について

いろいろ書いてありますが、とりあえず、今使ってるNetAppファイルサーバにNTLMv2を使ってアクセスしてきてるユーザがいるのかを確認しましょう

「vserver cifs session show -fields auth-mechanism,protocol-version,windows-user,address」を実行して、auth-mechanismに「NTLMv2」がいる場合は対処が必須です。

netapp9101::> vserver cifs session show -fields auth-mechanism,protocol-version,windows-user,address
node          vserver session-id           connection-id address       auth-mechanism windows-user  protocol-version
------------- ------- -------------------- ------------- ------------- -------------- ------------- ----------------
netapp9101-01 svm0    14421088956793749524 535041285     172.17.44.173 Kerberos       VM2\testuser1 SMB2_1
netapp9101-01 svm0    14421088956793749539 535041298     172.17.44.174 NTLMv2         VM2\testuser1 SMB3
2 entries were displayed.
netapp9101::>

このテスト環境では、172.17.44.173はWindows 7 SP1クライアント、172.17.44.174はRHEL 7.6からCIFSマウントしている環境でした。

このRHEL7.6は「mount -t cifs //svm0.adosakana.local/testutf /mnt2 -o user=testuser1@adosakana.local,password=パスワード,vers=3.0」と実行してマウントしているもので、sec=オプションを付けていない場合はNTLMv2を使用しているようでした。

この「vserver cifs session show -fields auth-mechanism,protocol-version,windows-user,address」はCIFS接続が継続している間は表示される、というものになっているため、数分間アクセスを行わないとリストから消えます。

このため、NTLMv2でアクセスしているかどうかが分からない機械がある場合は、アクセス操作を行ってみた直後にコマンドを実行してみる必要があります。

必要な対応

ONTAP OSのバージョンアップが必要な場合はアップデートを行います。

2023/05/11時点ではCVE-2022-38023に対応するアップデートとして以下が提供されています。

 ONTAP 9.7P22 (End of Limited Support 2025/07/31)
 ONTAP 9.8P18 (End of Limited Support 2025/12/31)
 ONTAP 9.9.1P15 (End of Limited Support 2026/06/30)
 ONTAP 9.10.1P12(End of Limited Support 2027/01/31)
 ONTAP 9.11.1P8 (End of Limited Support 2027/07/31)
 ONTAP 9.12.1P2 (End of Limited Support 2028/02/28)

FAS2520/2552/2554,FAS8020/8040/8060/8080 は ONTAP 9.9.1 までサポート
FAS2620/2650 は ONTAP 9.11.1 までサポート
FAS2720/2750などの現行機種は 制限なし

アップデート先は、同じONTAP OSバージョン内の最新にするか、ハードウェアがサポートされている範囲の新しいバージョンにするかはご自由に

ONTAP OS 9.6などのアップデート提供がバージョンを使用している場合は、ONTAP 9.7以降にアップデートする必要があります。

古いONTAPを新しいONTAPにアップデートする場合、状態によっては複数回のアップデートが必要となります

詳細は「どのバージョンの ONTAP にアップグレードできますか。」を参照してください

例えばONTAP 9.11.1へアップデートする場合、下記のような手順となります。

  ONTAP 9.4→(9.5+9.7)→9.9.1→9.11.1
  ONTAP 9.5→(9.7+9.9.1)→9.11.1
  ONTAP 9.6→9.8→9.11.1
  ONTAP 9.7→(9.8+9.11.1)

(9.5+9.7)というのはONTAP 9.5とONTAP 9.7のアップデートファイルを読み込ませてONTAP 9.7のアップデートとして実行すると、内部的に自動的にONTAP 9.5の適用を行ったあとに9.7適用を行ってくれる、ということをします。

どんな感じでアップデートするか、というのは「この記事」から持ってきた下記画面を参照してください。

1)「イメージの追加」からアップデートするファイルを2つ登録する

2) 新しいバージョンを選択して「更新」

3) まずは古いバージョンの方の適用が開始される

4) 続いて新しいバージョンの方が適用される

5) 終了


NetAppでの調査/対応に関するメモ

NetAppでサポートする認証方式の変更

Set the SMB server minimum authentication security level

「vserver cifs security show -fields lm-compatibility-level」で現在設定されている認証方式を確認

netapp9101::> vserver cifs security show -fields lm-compatibility-level
vserver lm-compatibility-level
------- ----------------------
Cluster -
Snapmirror-WAN
        -
netapp9101
        -
netapp9101-01
        -
svm0    lm-ntlm-ntlmv2-krb
svm2    lm-ntlm-ntlmv2-krb
svm3    lm-ntlm-ntlmv2-krb
7 entries were displayed.
netapp9101::>

値の意味は下記

ValueDescription
lm-ntlm-ntlmv2-krb (default)The storage virtual machine (SVM) accepts LM, NTLM, NTLMv2, and Kerberos authentication security.
ntlm-ntlmv2-krbThe SVM accepts NTLM, NTLMv2, and Kerberos authentication security. The SVM denies LM authentication.
ntlmv2-krbThe SVM accepts NTLMv2 and Kerberos authentication security. The SVM denies LM and NTLM authentication.
krbThe SVM accepts Kerberos authentication security only. The SVM denies LM, NTLM, and NTLMv2 authentication.

標準ではLM, NTLM, NTLMv2, Kerberosに対応している、ということになっている。

NetApp側で強制的にLM,NTLM,NTLMv2クライアントを排除する、という場合は「krb」に変更する

Kerberos接続時のAES暗号化を有効化

Enable or disable AES encryption for Kerberos-based communication

「vserver cifs security show -fields is-aes-encryption-enabled」を実行して確認。ONTAP 9.12.1以降は「true」が標準値となる。

netapp9101::> vserver cifs security show -fields is-aes-encryption-enabled
vserver is-aes-encryption-enabled
------- -------------------------
Cluster -
Snapmirror-WAN
        -
netapp9101
        -
netapp9101-01
        -
svm0    false
svm2    false
svm3    false
7 entries were displayed.
netapp9101::>

なお設定を変更する場合は、ドメイン認証を求められるので注意

netapp9101::> vserver cifs security modify -vserver svm0 -is-aes-encryption-enabled true
Info: In order to enable CIFS AES encryption, the password for the CIFS server
      machine account must be reset. Enter the username and password for the
      CIFS domain "ADOSAKANA.LOCAL".
Enter your user ID: administrator
Enter your password:
netapp9101::> vserver cifs security show -fields is-aes-encryption-enabled
vserver is-aes-encryption-enabled
------- -------------------------
Cluster -
Snapmirror-WAN
        -
netapp9101
        -
netapp9101-01
        -
svm0    true
svm2    false
svm3    false
7 entries were displayed.
netapp9101::>

なお、AES暗号化に関連する設定は is-aes-encryption-enabled 以外に aes-enabled-for-netlogon-channel という設定もある。こちらの詳細については「CVE-2022-38023適用後 NetAppがActive Directoryに参加できない」参照


2023/07/24追記

sambaによるActive Direcotryサーバで NTLMv2認証を使う場合のトラブル

sambaの商業サポートを行っているOSStechに2023/07/21付けのお知らせとして「Windows Updateに伴うSambaの認証の問題を解消するアップデートです。」が掲載されています。

曰く、セキュアチャネルが壊れ、下記3種類の問題が発生するとのこと。

・Sambaのみを使用したActive Directoryサーバ環境におけるNTLM認証が失敗
・リモートデスクトップの認証が失敗
・Sambaのみを使用したNTドメイン環境でNTドメインのログオンが失敗

バグとしては恐らく「BUG 15418: Secure channel faulty since Windows 10/11 update 07/2023」となる

てっきりActive Directoryサーバを運用しているWindows Serverのみ気を使っていればいいのかと思ったら、クライアント側にも影響があったとは・・・


2023/11/14追記

ONTAP 9.10.1より前のONTAPで、CVE-2022-38023適用したActive Directoryドメイン(sambaドメイン含む)に参加できない、という事象が発生した。

詳細は「CVE-2022-38023適用後 NetAppがActive Directoryに参加できない」に書いたが、Active DIrectoryサーバとONTAP間のkerberos通信の暗号化をRC4 MD5ではなくて、AESを使うようにしなければならないので、NetAppのcifsオプションにあるis-aes-encription-enabledとaes-enabled-for-netlogon-channelを有効にする必要がある、というものだった。

Win10 2.5インチSATA起動ディスクをNVMe起動ディスクに移行した


元々は、Intel CPUのNEC Mate でインストールしたWindows 8.1 ProのシステムディスクがWindows 10 Proになったあと、AMD Athlon 220GEのmicroATXマザーパソコンに移動して使用していた。

Beelink SER5 Proに移行するにあたり、引き続きこのシステムディスクが利用できないかを実験した。

さすがに元の起動ディスクをそのまま実験するのは怖かったので、別のディスクにコピーしてから実施した。

1) 元環境をClonezillaで起動してシステムディスクをコピー

USBメモリにClonezillaを書き込んで「device-device」でシステムディスクを別の2.5インチSSDにコピーした。

(最初はdevice-imageでNASにバックアップしようとしてたのだが、何故か途中で失敗することが多発したのでdevice-deviceに変更した)

以降の作業はコピーしたSSDで実施した。

2) 元環境でMBR変換

Windows 10のインストールUSBを用意して、リカバリモードのコマンドプロンプトを開く

「mbr2gpt /convert /disk:0 /allowfullos」を実行

最後が「failed」と出ていたが、追加対処が必要という意味

普通に再起動して、Windows10を起動

管理者権限でコマンドプロンプトを開いて「reagentc /disable」「reagentc /enable」を実行してシャットダウン

BIOS設定を変更してUEFI onlyで起動する設定に変更して、起動してくることを確認

参考にしたページ:ライフボードBLOG「MBR OSをGPT OSに変更する方法(Windows10 64bit)
(The BASIC/ざべ で知った会社、まだあったんだ、と思ったなど)

3) 元環境でchkdsk実行

clonezillaでファイルシステムの問題が出ることがあったので、「chkdsk /f /b」を実行して再起動

再起動時にちょっと長めのファイルシステムチェックが行われるので、終わるまで待つ

4) 新環境をClonezillaで起動してシステムディスクをコピー

まず、ClonezillaのUSBメディアで起動したあと、元環境の2.5インチSSDをUSBケースに入れて接続

「device-device」で2.5インチSSDからnvme SSDへのコピーを実施

5) 新環境を内蔵NVMeのみで起動

USBメディアを取り外して、コピーしたNVME SSDのみで起動。

起動後、足らないデバイスドライバがあれば追加

6) 作業終了

Beelink SER5 ProにWindows 10を入れた


いまAthlon 220GEで使っているmicroATXマザーのパソコンを小型化しようかなーと探していたら、Ryzen 7 5800H搭載のBeelink SER5 PROが 47430円というお値段で売っていた

コレは安い!ということで1台購入

Windows 11 Proがインストールされていたが、初回起動時はsysprepウィンドウが開いて再起動がかかった

そのあと、通常のセットアップが開始された

ミニPC界隈でWindowsのライセンスがボリュームライセンスになっているのは駄目なのでは?という話があったのでslmgr /dli を実行してみると「VOLUME_MAK channel」表記

ただ、これって、sysprep実行し場合の仕様では?という話もあったので、とりあえずWindows 10 Proで再インストールしてみたところ、下記の様に「RETAIL channel」として認識されていることを確認できた。

Windows 10 Proインストール後は、こんな感じのデバイス認識状況だった

デバイスが2つ認識されていないが、どちらもAMDチップセット関連のもの

ネットワークにつなげたら片方は自動的にドライバが適用されて消えた

もう1つの方は、AMDのドライバダウンロードページから「AMD Software: Adrenalin Edition」をインストールすればいいのだが、種別選択がわかりにくすぎる

「Processors with graphics」の「AMD Ryzen Processors」の「Ryzen 7」というものを上から順に見ていくもなかなか見つからない

「Ryzen 7 Mobile Processors with Radeon Graphics」にてようやく発見

AMD Software: Adrenalin Edition インストール後は全てのドライバが適用された。

Beelink SER5 ProのBIOS画面はこんな感じ


2023/06/19追記

SER 5 PRO添付のACアダプタが19V3.42Aで5.5/2.1φという東芝/富士通系DC19V仕様であったため、手持ちの東芝19V4Aアダプタを流用して1ヶ月使っていたのですが、最近になって使用中にいきなりスリープスタンバイに入る処理が開始されてしまう、という謎な現象が発生しだしました。

スリープから復帰するとオーディオデバイスが警告出して使えなくなってる、とか、USBにハードディスクつないでも使えないとかいう状況も併発していました。

このため、純正の19V3.42Aアダプタに戻して使用しています。

APC Network Management Card のメモ 2023/04/13版


久しぶりにAPC Smart-UPS に Network Management Cardを入れて設定することになった。

しかしAPCのサイトにある「Network Management Card | よくあるお問い合わせ」にある「Network Management Card 2のAPC Device IP Configration Wizard 5.0.2 を使用したIPアドレス設定方法」に記載されているリンク先は軒並み機能していなかった。

そんなわけでメモ書き

1) Network Management CardのIPアドレスを振るのはシリアル接続かDevice IPソフトウェア

Network Management Card Device IP Configuration Utility v5.0.4

ただし、Java Runtime Environment 1.8以降が必要なのだが、何を使うかが悩みどころ・・・

APCのドキュメント的にはすなおにOracle Java SE Runtime Environmentのダウンロードを推奨で

他社をみるとQuestもOracle JRE「JRE(version 1.8 or above) Installation for Microsoft Windows (4229374)

キヤノンITソリューションはAmazon Correttoを使っていた「Q:【構築手順】Windows Server環境で、オープンソースJDKを利用してセキュリティ管理ツールをインストールするには?

とりあえず今回はjre-8u361-windows-x64.exeを使った

2) Network Management Cardのfirmware

UPS Network Management Cardsのfirmware からfirmwareをダウンロード

カードを挿すUPSの種類により適用するfirmwareも異なる

3) Device IP使っても出ない場合

dhcpで範囲内にいるはずなのにDevice IPで出てこなかった

その場合はarp -aの結果からMACアドレスが「28:29:~」(Network Management Card 3/AP9640Jの場合)で始まるものを探して総当たりでhttpsアクセスしてみるとよい

4)Network Management Card 3の言語表示

Network Management Card 2では追加言語ファイルを導入しないと日本語表示がなかったりした。

Network Management Card 3は標準状態で多言語対応しているのだが、デフォルト表示が基本Englishとなっている。

ログイン画面の言語設定変更は[Configuration]-[Security]-[Local Users]-[Default Settings]

ここのLanguageを「English」から「日本語」に変えるとログイン画面の表示が日本語になります。

ログイン画面は日本語になったものの「apc」ユーザでログインすると英語表示。

これはユーザ特有設定の方にあるため、[Configuration]-[Security]-[Local Users]-[Management]でユーザ一覧を表示する

「apc」をクリックしてLanguageを「English」から「日本語」に変える

4)PCNSのコマンドファイルの指定について

シャットダウン時にバッチファイルを実行させるべく「コマンドファイルのパス」に指定しようと文字を入力しはじめたら下記の様に言われた。

コマンドファイルを読み込めませんでした。ファイルはPowerChuteインストールディレクトリのuser_filesフォルダーにある必要があります。詳細については、ヘルプを参照してください。

ということは、C:\Program Files\APC\PowerChute\user_files にファイルを置いて、ファイル名だけ指定すればいいのかと思ったが、相変わらず上記のエラー

フルパスで指定したら通った・・・

5) ssh接続がうまく行かない

PowerChute Network Shutdown のv4.4にはsshで他のサーバにログインしてコマンドを実行する機能がある。

これを利用してNetAppにログインしようとしたのだがうまくいかない

SSH アクションとして2種類登録を作ってみた

1つはユーザ名とパスワードを入力してログインするタイプ

もう1つはsshキーを使ってログインするもの。

ここで指定したsshキーは C:\Program Files\APC\PowerChute\user_files\ssh_id_rsa.txt という形でWindows Server標準のssh-keygenコマンドを使って作成したやつをコピーしたもの。

アクセス権については特に調整していない。

どちらの設定でも実行するコマンドを列挙した「SSHコマンドファイルのパス」は C:\Program Files\APC\PowerChute\user_files\netappshutdown.txt とした。

内容は以下の確認なしでNetAppを停止する手法を記載した。

set -confirmations off; system node halt -node * -inhibit-takeover true -ignore-quorum-warnings true

で・・・これだけでは動かなかった。

PowerChute Network Shutdownのヘルプにある「SSH設定」の説明で以下がある。

認識されているコマンドプロンプトは次のとおりです。
 ・$ (Linux)
 ・# (Linux admin/root)
 ・> (Windows または RPDU)
ssh_prompt_regex」設定を[SSHAction]セクションに追加することにより、カスタムコマンドプロンプトは、PowerChute構成ファイル (pcnsconfig.ini) を介して追加できます。例えば: 「~」のカスタムコマンドプロンプトを追加するには、「ssh_prompt_regex = ~\s」を追加します。

NetAppのコマンドプロンプトは「クラスタ名::> 」なので、WindowsまたはRPDUの「>」で通るものかと思っていたのですが、違ったようです。

C:\Program Files\APC\PowerChute\group1\pcnsconfig.iniの[SSHAction数字]に以下のように「::>」プロンプトを追加することで動作するようになりました。

ssh_prompt_regex = \::>\s

Windows 11 on ARMをRK3588SのOrange Pi 5で動かす


しばらく前から、Rockchip RK3588を積んだRock 5B上でWindows 11 on ARMを動かす、というものが公開されていた。

元々は2022年11月にRock 5の販売元であるradxaのフォーラムの「Windows / UEFI on Rock 5 (Mega thread)」(https://github.com/edk2-porting/edk2-rk35xx)で公開されていたものが、2023年3月にtwitterでMario BălănicăさんがROCK 5B向けで動かしているツイートをしてから開発が加速(https://github.com/mariobalanica/edk2-rk35xx)

そこにOrange Pi公式が乗っかったことでOrange Pi 5向け対応も行われるようになった形です。

しばらくは具体的な導入手法はなく、UEFIのみ提供されている状態でしたが、3月下旬にWoRプロジェクトのWebに「Preliminary installation guide for RK3588 boards」と手順が公開され試しやすくなりました。

2023/04/12現在でのOrange Pi 5での制限事項

全体的なもの

・M.2コネクタ利用不可
・HDMI出力のみ対応(Type-C出力は使用できない)
・オンボードNICが使えない

USBコネクタに関する制限事項

・USB 3.0(青コネクタ)の上側のポートはUSBストレージ用に使う
・USB 3.0(青コネクタ)の下側のポートはキーボードなどで使えると書いてあるのだがうまく動かず
・USB 2.0(縦配置のやつ)にUSBハブをつなげてキーボード/マウス/USB NICをつなげると良い
・Type-CコネクタもUSB 2.0扱いで使えるらしいのだがうまく動かず

Windowsのインストール先について

・microSDから起動することもできるっぽいのだが成功せず
・USB 3.0(青コネクタ)の上側ポートにつけたUSBストレージからの起動には成功
・速いストレージを使わないと起動がすごく遅い

セットアップ手法について

WoRの「Preliminary installation guide for RK3588 boards」のWindows手順ではメディア作成関連がいまいち分かりづらかったので、Ubuntu 20.04環境で設定を行った

用意するもの
・USB接続で速いディスク
・UbuntuマシンとOrange Pi 5を繋ぐUSB-A/Cケーブル(SPI書き込みの際に使用)
・USB NIC(Windows11標準で認識するもの)
・USB ハブ(キーボード/マウス/NICをつなぐにはポートが足らないので)

手順概要

1) Ubuntuに前提条件パッケージをインストール

以下のworkliが要求しているパッケージをインストール

# apt install gawk xmlstarlet jq wget wimtools ntfs-3g curl cabextract chntpw genisoimage zenity 

rkdeveloptoolが要求するパッケージをインストール

# apt install libudev-dev libusb-1.0-0-dev dh-autoreconf

2) rkdeveloptool をコンパイルしてインストール

基本としてはrockchip wikiのRkdeveloptool に記載のやりかたで https://github.com/rockchip-linux/rkdeveloptool のレポジトリをcloneしてコンパイルするんだけど、実はwikiは記載が足らないので、githubの方に記載のコマンドでコンパイルして、 /usr/local 以下のインストールする。

$ git clone https://github.com/rockchip-linux/rkdeveloptool.git
$ cd rkdeveloptool
$ aclocal
$ autoreconf -i
$ autoheader
$ automake --add-missing
$ ./configure
$ make
$ make install

3) workli.sh を入手

githubの https://github.com/buddyjojo/worklireleases から workli.sh をダウンロード

ver 1.0時点では、GUIダイアログで選択させる系のつくりになっているためX-Window環境が必要

4) workli.shを実行してSPI/SD選択まで進める

まず、日本語でメッセージが出力されていると、デバイスが識別できなかったので英語で動作させる

$ export LANG=C
$ sudo bash workli.sh

また、sudoを実行する必要があるので、環境によっては下記の様な実行が必要となる

$ export LANG=C
$ xhost +
$ sudo  XAUTHORITY=~/.Xauthority  bash workli.sh

ブートローダ/UEFIをSPIかSDのどちらかにするところまできたら、SPIを選択

5) Orange Pi 5をUbuntuマシンにつなげる

Orange Pi 5に電源ケーブルを繋がない状態で、HDMIコネクタの右側のType-CをUbuntuマシンにつなげ

Orange Pi 5の基盤上にあるMaskromボタンを押しながら、HDMI左側の電源用Type-Cコネクタに電源をつなげる

そうすることで、Ubuntuマシン上にOrange Pi 5がデバイスとして認識される

6) workli.shのプロセスを進める

windowsイメージのダウンロードも自働で行ってくれる

7) USBストレージをUbuntuマシンにつなげる

UbuntuマシンにつなげていたOrange Pi 5を外して、代わりにWindowsをインストールするUSBストレージをつなげる

8) workli.sh でUSBストレージにWindowsをインストールする

9) 書き込んだUSBストレージをOrange Pi 5につなげてOrange Pi 5を起動

まずは下記のようなOrange PiのロゴのUEFIが表示される

しばらくすると下記のようなコマンドプロンプトが表示されて再起動

Orange Piのロゴが表示されたあと、下記の様なブルースクリーンが表示され、再起動する・・・というのを2回くらうと、先に進むのでしばらく放置する

しばらく待つと下記の様な「準備しています」表示になる。

そのうち下記の様なWindows 11の初期セットアップ画面が表示される

Windows 11の場合、Proであってもインターネット接続が必須とされているのを回避するため、Shiftキー+F10キーでコマンドプロンプトを開いて「oobe\bypassnro」を実行する。

実行すると再起動がかかるので、しばらく待ってWindows 11の初期セットアップを進める

Windows 11が起動する

2023/04/12時点ではデバイスマネージャの認識は以下の様な形となっていた

Windows のarm64ビットとして動作していることが確認できる。

また、ラズパイ4の時と同様に古い32ビットWindowsアプリも動作することが確認出来る。